【感想】宝塚雪組「ファントム」とんでもないものを観てしまった

先日、東京宝塚劇場雪組公演「ファントム」を観てきました。

これは「オペラ座の怪人」を原作に作られたものの、

有名はロイドウェヴァー版とはまた違う、海外ミュージカルです。

宝塚では4度目の再演。

今回の雪組公演は、トップ望海風斗さんもファンも熱望していたファントム。

そして相手役クリスティーヌには本物の天使の歌声をもつ真彩希帆さん。

ベストキャスティングの再演に、チケット獲得はもうドS級。

でもなんとか観に行くことができました。

 

 

宝塚の舞台は、あまりに期待していくと、「思っていたほどではなかった」

ことが多々あります。

今回は前評判がすごくて、どこでも大絶賛されていたので、期待値マックス。

それゆえ、上記の「期待はずれ」にならないか心配もあったのですが。。

 

そんなことなかった!!!期待を軽く超えた!!

もう、文句なしに、素晴らしい!!!!としか言えない。

映像で見ても素晴らしいとは思うけど、やっぱり生の舞台で見るのは違う。

この奇跡のキャスティング、奇跡の公演の生の場にいれたことを本当に幸せに思う。

 

冒頭、パリの市街からオペラ座の地下へ誘う大スクリーンの映像をオーバーチュア

と共に駆け抜けて行くと・・・(オーバーチュア、今までと変わりましたね)

 

ファントムが「僕の叫びを聞いてくれ」と、自分の悲しい境遇を歌います。

「どうしてこの世に産まれてきたのだろう」感がすっごいわかる。

 

その一声で、ぞぞぞぞぞーーーっと、全身全霊を鷲掴みにされる感じ。

劇場を包み込む豊かな声量と歌声に、「もっと!もっと歌って!」と

願わずにいられません。

 

望海ファントム(本名エリック)は、その生い立ちゆえに繊細でガラスのハートを

持った引きこもりの少年。

でも死んだ母親には心から愛され、面倒を見てくれる劇場支配人(実は父)の

おかげか、ピュアな心を持つ、人を愛し愛されることに憧れを抱く少年のようでした。

きっと何の楽しみも知らないエリックにとって、唯一愛するものが「音楽」で、

クリスティーヌの天使の歌声に出会ったときは、「生きがい」を彼女に見出したのでしょう。

「僕が君をオペラ座で歌えるようにしてあげたい」と話しかけるシーンは、

他人と喋ったことがないからこそのコミュ力のなさを感じるオロオロ声。

でもやっと生きがいに出会えた嬉しさを感じます。

 

名曲「HOME」でクリスティーヌの「ア〜アーアアアー♩」

と歌う声を聞くところでは、

今までのエリックは「マイナスイオンあびてる〜〜〜!」というような

うっとりした顔で幸せを感じている表現でしたが、

望海エリックは「あまりの感動に声も出ない、動けない・・・

しかし僕はついに天使を見つけてしまった!」

といったような表情だったように思います。

 

その後、自分のレッスンのおかげで歌が上達し、

オペラ座の団員になれたクリスティーヌに花束を持って会いに行きますが、

イケメン伯爵ときゃっきゃしてる彼女を見て呆然とするエリック。

その花束の白い花は冒頭のオーバーチュアで流れた映像で

なぜかピックアップされてた地下に咲いていた花なのかしら?

いっぱい咲いている感じではなかったけど、一生懸命地下で摘んで花束に

したのかなぁ・・と想像すると

もう、キュンキュンしてしまった!!!

 

そしてクリスティーヌのデビューではオケでタクトふりながら

こっそり且つ大胆に見守っています。

その背中から出る愛情の表現、お見事です。

クリスティーヌがカルロッタの陰謀で喉を壊しててんやわんやになった時、

思わず舞台に駆け上がって舞台をひっちゃかめっちゃかにします。

ハプニングがあっても静かに幕を閉じていればよかったのに・・・

シャンデリアを落下させる発砲事件までおこしちゃって・・・

 

でも、クリスティーヌへの愛、すっごい感じたよ。

僕の音楽の天使が舞台で晒し者にされるところなんて、

誰にも見せたくない。彼女が傷つくのは絶対に嫌だという庇護の愛情。

 

その後楽屋で「私、失敗しちゃって・・・」と言うクリスティーヌに、

原因もわかってないのに「君のせいじゃないよ・・・」と優しく慰めてた。

 

すっっっっっごい優しい!!!

エリックも「なんで??彼女が失敗するなんて???」

と状況を理解できていなかったはずだけど、まずは責めることなくヨチヨチしてあげてる。

 

すぐにカルロッタのせいと分かって、そこからのエリックはぷっつん切れて、

情緒不安定さに拍車がかかり、感情がぐわんぐわん揺れ始めます。

「もうこんな汚い世界に彼女をおいておけない!」と地下へ拉致。

 

ここで一幕が終わるわけだけど、終わった瞬間、、

 

「すごいものを見てしまった___」とどっと疲労感。

 

主役だけじゃないの。

出演者全員、スタッフ、オケからの「すごいもん見してやんぜ!!!」の

ドヤァ!!!の圧がすごい。熱量すごい。

観客もそれに引っ張られて、舞台→←観客のお互いエネルギー放出しまくり。

自分、喉カッラカラ。お茶〜〜お茶くれ〜〜〜!

 

休憩でエネルギー補給して、一息ついて二幕へ。

 

二幕の始めはしっとり気味。

エリックの新曲が増えたことが嬉しい。素敵な曲だったな。

その時、ダンサー兼エリックの従者たち

(元は浮浪者でエリックの従者として支えているという謎の人たち)が

ベッドで寝ているクリスティーヌを囲んで拝むような振り付け・・・

どういう意味だったのかな?

私は、孤独な主人(エリック)に愛を与えてくれる存在として崇めている、

期待している、という解釈かなと思ったのですが。。

 

そこから情緒不安定なエリックは仇カルロッタを殺し、

そのままウキウキ森デートしちゃうんだけど。

(何度見ても地下に森??って謎すぎなんだけど)

 

前回の花組蘭寿エリックの方がウキウキ♩してたかな。

蘭寿エリックは見てるこちらが恥ずかしくなっちゃうくらい

恋愛経験ないウブな少年ぽくウキウキでちょっと暴走しちゃってたけど、

望海エリックはもう少しスマート。

傷ついたクリスティーヌを元気付けたいし、僕のことも知ってもらいたい、

今2人きりで自分のお気に入りの場所にいれる静かな時間を大切に噛み締めたい、と。

「2人の時間」を作ろうとしている感じがしました。

女性の扱い知らないけど、本とか読んで「恋」に憧れてたんだろうなぁ・・・

オペラは詳しいだろうし、オペラはどれもドラマチックだけどね。

エリックは「ロミジュリ」とか好きそう。

 

クリスティーヌに「あなたの顔を見せてください」と、

「あーそこ触れて欲しくなかったーーー」というお願いをされるけど。

真彩クリスティーヌの天使の歌声には・・逆らえないよね。

 

(そう、この真彩クリスティーヌ、登場時は天使の歌声ながらもまだ未熟な感じ

で、でもこの「My True Love」では完成された歌声になっているという

歌声の上達度まで表現されている・・・)

 

望海エリックは呆然とし、膝からガックリいってしまいます。

蘭寿エリックは恐怖と葛藤でブルブル震えていたけれど、

望海エリックは、、、思考停止状態。

 

呆然としたまま、仮面を外します。

 

真彩クリスティーヌは、真剣な表情で向かいあおうとしているのがわかります。

軽い気持ちでお願いしたわけじゃない、私ならきっと受け入れられるって

本気で思っていたと思います。

きっと、自分が想像できる範囲を超えた恐怖心だったのでしょう。

(本人の解釈では「彼の背負っているものが大きすぎて恐怖を感じた」

だそうですが)

脳が思考停止し、体が勝手に後ずさりして逃げずにはいられなかった

という感じが出ていました。

(前回の蘭ちゃんクリスティーヌは変質者を見たみたいな感じだったから)

 

エリックは、クリスティーヌに受け入れてもらえないこと分かってたんじゃないかな。

だてに引きこもってるわけじゃねぇぞって。

まだ見せれる段階じゃねぇぞって。

(僕の代弁者である詩集もまだ読んでもらってないしね)

でもクリスティーヌにあんなに素敵にお願いされちゃ、逆らえないよね。

99%拒絶されるって分かってたけど、1%の希望をもって仮面を外したよね。

 

逃げられて「やっぱりーーーー!!!」って泣くところ、

蘭寿エリックの方が「ガーーーーン!!!」感は強め。

望海エリックはクリスティーヌに拒絶されたことへのショックよりも、

「やっぱり自分は幸せになれないんだ・・・この顔のせいで・・」」と、

ついさっきまで自分の人生に希望を見出し始めていたのに、

ガラガラと崩れ去って振り出しに戻るどころかマイナスになった、

コンプレックス増強からの哀しみという感じがしました。

 

でもそこで諦めないのよね。拒絶されてもクリスティーヌが欲しいという執着。

もはや歌ではないすすり泣きで歌いながら銀橋を渡る。

蘭寿エリックは銀橋渡り終えたらすっかり立ち直っていましたけれど。

望海エリックは声もか細くてトボトボ・・という感じ。

繊細なハートがより繊細に。

でももう失うものはないもんね。

行動を起こすことで不幸な結果になったとしても、

もう今までと同じ生活はできないよね。

 

でもね〜・・着替えて地上まで来ちゃうわけだけど、これが良くなかったね。

だってあなたを捕まえようと警察がうようよしているんですもの。

一斉に捕まえようと襲ってくる警官たちにへなちょこキックで応酬します。

(戦いの実戦経験はないもんね・・・)

でもやっぱり捕まってしまって、生け捕りにされるくらいなら、と

父に殺してくれるよう頼みます。

 

最後は駆け寄るクリスティーヌの腕に抱かれて、

コンプレックスの顔にキスもしてもらって、幸せな最期でしたね。

 

クリスティーヌは、森で素顔を見たときは想像を絶する恐怖で思わず

逃げてしまったけれど、そこで「今までの自分は浅かった」

ことに気づくことができた。

エリックのすべてを受け入れることができるようになったから

顔にキスをすることでそれをエリックに伝えた。

 

エリックが死んで地下に行ったのはなぜかしら?

歌のレッスンで何度も通った地下のレッスン室なのかな。

今まではそこに行けば必ず先生に会えたから、

「もう一度会いたいの」って歌ってたし、会いに行ったのかな。

会えるわけないけど、もしかしたら・・・思っちゃったのね。

(私も中学生の頃、最愛の祖母が死んだとき、会えるわけないのに

死んだのは嘘かも、家に帰ったらいるかもって思っちゃった経験があります)

 

地下に行ってやっぱりエリックは死んじゃったけど、

自分には先生がくれた音楽があるから

いつも側にいてくれるって思ったのかな。

 

綺麗に話がまとまってました。

 

 

まだ書きたいこといっぱいあるけど、とりあえず終わり。

 

やっぱり「歌える」って良い。

いくら役の解釈が深くても、気持ちがあっても、

「表現」できる技術がなければ伝わらないもの。

今回の舞台は技術に裏打ちされた説得力がありました。

特にオペラ座の怪人は「天使の歌声をもつクリスティーヌ」が大前提

なわけだから、これがないと物語が成立しないもん。

他が良くても嘘くさく見えちゃうもんね。

真彩クリスティーヌは本物でした。

 

そして、望海エリックの愛情ーーーー!!!

すごいよーーーーーー!!!!!!

 

 

とにかく言いたいこと

 

「とにかくすごいものを見た」

 

 

PS 彩凪フィリップが出てくると、そのキラキラオーラに

「あぁ、宝塚観てる〜〜〜」と不思議な安心感がありました(良い意味でね)